岩手の山と海の恵みを取り入れる住まい 長澤紗織設計室
現場レポート 長澤紗織設計室
盛岡市内にて、岩手の山と海の恵みを取り入れたお宅の改装工事が進んでおります。
始めに海の恵みです。
壁は漆喰仕上げで、塗りの最中です。
漆喰の原料は岩手三陸産のカキの殻です。
このカラを細かく砕いて粉状にしたものに、つなぎである麻すさ、つのまた糊、酸化チタンを加えて
漆喰の原料を作ります。
こちらが麻すさ。
漆喰粉末に水と麻すさを混ぜます。
漆喰の出来あがりです。
丁寧に塗っていきます。
磯の香りがほのかにあります。
「カキの殻の多くは、何も利用されずに捨てられていましたが、漆喰壁に利用することで、
シックハウスを引き起こす室内の化学物質や、タバコなどの臭いを吸着・分解する働きがあります。
無垢の木材との相性も非常に良いので、貴重な岩手の資源として今後も設計に取り入れたいです」
と室長の長澤さんはおっしゃいます。
続いて山の恵みです。
床は大工さんの手で、岩手県産の桜の床板が敷かれています。
桜の板材は淡いピンク~赤色をしており、桜の花を連想させてくれる色合いです。
桜などの広葉樹は、幹が真っ直ぐ育ちにくいため、なかなか長い材料を作ることができません。
そのため、節などの部分を除くと、無垢材ではせいぜい40センチから90センチ程の長さです。
「その1枚1枚は、木目や色も微妙に異なりますので、大工さんもただ適当に敷くわけではなく、
仕上がりを見据えて色の似た板で揃えて敷く、隣の板と長さが揃わないよう、ランダムに敷くなど、
パズルのピースを埋め込んでいくような、センス・工夫が必要になります。こうした一手間が
有るか無いかで、仕上がりが全く違ってきます」
と長澤さん。
上流の山があり、私たちの暮らす村、町があり、下流、果ては海へ。
山と海は繋がっているとは言うものですが、まさにそれを体現させているお宅でした。
次回はいよいよ完成した様子を報告します。